中古アパレルの2nd Streetは儲かってる?〜アパレル各社の決算書を比較して見えたこと〜

2nd street(セカンドストリート)というブランドをご存知でしょうか。
ゲオグループの中古アパレル事業で、主に郊外の国道・県道沿いに店舗展開しています。

郊外にあったユニクロやコンビニの居抜き店舗を使ったり、ゲオの店舗転換する形で増えているショップですね。 ゲオと店舗を共用もしています。

昨今、中古スマホの買取が増えているということで、郊外にレンタルDVDなどや中古ゲーム事業を展開するゲオグループの決算書を見てみたのですが、その中で気になったのがこの2nd Streetという中古アパレル事業。

ゲオグループの中では「リユース系リユース事業」と呼んでいる事業です。

「リユース系リユース」って何だか変わった呼び名ですね。ゲオというと、DVDなどのレンタル事業や中古ゲームの買取・販売事業を思い浮かべると思いますが、この中古ゲームの買取・販売事業のほうを「メディア系リユース」と呼んでいます。それと区別するためにこのような呼び方をしているみたいです。ちなみに、私が元々知りたかった中古スマホ事業は「メディア系リユース」に属します。

さて、今回決算書を見て着目したのが「リユース系リユース」中古アパレル事業です。

この中古アパレル事業で驚いたこと。それは

粗利率高いんじゃね?!

ということ。

なんと中古アパレル事業は約70%の粗利率(売上総利益率)を叩き出しているのです。

これは結構儲かっているんじゃなかろうか?とても気になったのです。

とは言ってみたものの、この粗利率が高いのかどうかは正直分かりません。というのも、事業の特性上これくらいの粗利率が一般的で、同業他社も同じ水準の粗利率ということもあります。それに、”儲かっているか”については、粗利率が仮に高くても販管費を除いた営業利益率、いわゆる「本業の利益率」が低ければ疑問符が付きます。

そこで今回は「2nd Streetという中古アパレル事業は儲かっているのか?」を自分なりに調べてみました。

ゲオグループの同業他社の決算を比較してみた中で、ゲオグループ内での中古アパレル事業の位置付けや、同業他社との違いやそもそもアパレル業界の決算ってこんな感じだったんだということを書いていきます。

【補足】粗利とか、営業利益とか基本的な数値について

粗利率について一応言っておくと、仕入や製造などの商品にかかる原価を除いた利益を売上高で割った数字ですね。

この原価には「販管費(販売費及び一般管理費)」はまだ除かれていない数字です。店舗の販売員や営業マンや本社社員などの人件費、店舗にかかるテナント料や水光熱費、テレビCMなどの広告宣伝費などの販管費は粗利にはまだ含まれていて、粗利からこれら販管費が除かれると営業利益が出ます。

さらに、土地や建物の賃借料などの営業外収益が差し引かれて経常利益が出ます。

そして、保有株式の売却損益など毎期は発生しない特別利益・特別損失を差し引くと、税引前当期純利益が出て、そこから税金が取られて当期純利益が出ます。

粗利率というのは、事業の利益を一番始めにざっくり把握するための指標です。

本業の利益率を測る指標としては、販管費を除いた「営業利益率」での比較が一般的ですが、今回取り上げるゲオグループのように様々な事業を行っている企業の場合、販管費を会社全体の数字のみ公開している(事業毎に販管費を公開していない)場合には、各事業の営業利益率までは外部からはわかりません。そのため、粗利率を中心に比較しています。

ゲオグループの5つの事業セグメント

リユース市場はメルカリにやられている、という話

まず、ゲオグループをはじめとするリユース市場は昨今、市場環境が厳しくなっているということが言われています。

その要因は、メルカリをはじめとするフリマアプリ。記事によると、2nd Streetもその煽りを受けているという話。何でもフリマアプリの登場で古着の仕入れ(買取)環境が厳しくなっているようです。

確かに、2nd Streetは古着買取専門店というのを始めていて、最近関西にも神戸岡本に買取専門店がオープンしたようですし、ホームページやCMを見ても、めちゃめちゃ買取の強化キャンペーンをしていますから、仕入れに苦労しているという指摘はもっともなのかもしれませんね。

ゲオグループには5つの事業がある

さて、本題の2nd Streetという中古アパレル事業は粗利率が高いように見えるけど、そんなに旨い商売なのか?をゲオグループの決算から考える上でまず押さえないといけないのが、ゲオグループには5つの事業セグメントがあるということ。

それは「レンタル」「メディア系リユース」「リユース系リユース(中古アパレル事業)」「新品」「その他」の5つです。

この5つの事業セグメント毎の粗利率を見てみると、レンタル:約60%、メディア系リユース:約42%、リユース系リユース:約70%、新品:約14%、その他:約35%となっています。

中古アパレル事業の粗利率70%というのは、ゲオグループ内でも高粗利の事業だということがわかりますね。

この5つの事業の合計、つまりはゲオグループ全体の粗利率はというと約42%。

利益率が低い新品販売事業(ゲーム機・ゲームソフト販売)なども含めた数字になると、中古アパレル事業の高粗利率も随分押し下げられたように見えますね。

この粗利率から販管費を除いた営業利益率は16年3月度では約6%、17年3月期では約3%となっています。

16年と17年では3%もの差がありますが、16年が販管費の低減が大きかったようで、15年と14年の営業利益率はどちらも約3.5%ですので、ざっくりゲオグループの営業利益率は約3%台と考えていいでしょう。

中古アパレル単独の営業利益率は決算上わからない

中古アパレル事業の粗利率70%がその他4つの事業も含めた販管費の数字と営業利益率を算出すると、3%台にもなりますが、中古アパレル事業単独の営業利益率はどうかというと、これはわかりません。

ゲオグループの決算上では販管費は5つの事業全体で算出されたものしかないため、残念ながら中古アパレル事業のみの営業利益率は正確には把握できません

中古アパレル事業への期待は大きい

中古アパレル事業はゲオグループ全体でも稼ぎ頭ですが、これからのゲオグループを引っ張る事業として期待がかかっている様子が決算書から見てとれます。

2番目の粗利率を稼ぎ出しているレンタル事業は動画・音楽配信サービスで売上高が下がってきています。

2年前に日本に参入してきたNetflixをはじめ、HuluやAmazonプライムビデオ、音楽ではApple MusicやSpotifyなども徐々に広まっています。こういった新たな業態の登場で、一時はTSUTAYAとともに席巻したレンタル事業も次第に厳しくなってきています。

中古ゲームなどのメディア系リユース事業も、スマホゲームの普及で据え置き型ゲーム機自体、市場が縮小傾向にあります。

今年度は任天度スイッチの売れ行き好調だったようで、新品事業は売上高としては好調でも元々、粗利率は低い商売ですし、この任天度スイッチはダウンロード販売が主流になりそうなので、中古ゲームを扱うメディア系リユース事業に伸長はあまり期待できないように思います。

メディア系リユース事業には、中古スマホ、格安SIM販売も含まれるため、成長期待が持てそうな気がしつつも、格安SIMを買う層はまだまだ都市部に限られている状態ですので、ゲオが得意な郊外、田舎というエリアでゲームやレンタルをする人に格安SIMが広まるかというと疑問です。

マーケット的に大きな成長は難しいため、メディア系リユースは減少傾向にあります。

一方、中古アパレル(2nd Street)は出店攻勢と期待の現れでしょう。

同業他社の粗利率と比較してみる

この粗利率70%というのが高いのか低いのか普通なのか。アパレル系の他社の決算を見てみます。

アパレルといっても業態は結構バラバラですのでなかなか比較は難しいですが、決算書に表れた各社の特徴を捉えつつゲオの中古アパレル事業について考えてみたいと思います。

なお、ゲオについては上述の通り、中古アパレル事業単独の数字は粗利までとなっており、それ以降の販管費や営業利益、経常利益は全事業で集計されたものしか開示されていない点には注意が必要です。

中古アパレルという意味では、中古アパレル買取専門のブランディア(デファクトスタンダードという会社が運営しています)が近いですが、彼らの場合はネット専業です。一方、2nd Streetはリアル店舗を持っています。

リアル店舗という意味ではユニクロやしまむらが近いですが、ユニクロやしまむらは中古は取り扱っていません。

決算書に表れたユニクロとしまむらのビジネスモデルの違い

ここで面白いのが、ユニクロとしまむらが営業利益率では8%、9%と拮抗しているという点。

ユニクロは粗利率ではしまむらを17%も上回っていたわけですが、リアル店舗の人件費などを含む販管費を除いた営業利益率になると互角になるわけです。しまむらのほうが販管費を低く抑えることができているわけですね。

一方で、粗利の差に着目すると、ユニクロのほうが売上原価が低く抑えられているわけなので、その分粗利率が高くなっているわけです。つまりは、商品の原価はユニクロのほうが安く抑えられているのです。

といっても、ユニクロの商品の品質がしまむらより劣っているかというと、そういうわけではありません。

なぜそのような差が出てくるかというのがまた面白いところで、ユニクロはメーカーでもあるわけです。SPAと呼ばれる業態で製造小売業というやつですね。

一方、しまむらのほうはメーカーではありませんから仕入れに依存します。

どちらもファストファッションの雄として商品を短期間で入れ替えて販売していますが、しまむらはたくさんのメーカーから仕入れて売っている一方、ユニクロはメーカーとして製造段階で自社で手がけることでコストダウンを図ることで製造原価を低く抑えることに成功しているのです。その結果、粗利率を高く維持することができています。

ユニクロはSPAの代表例とよく言われますが、こうして決算数字で利益構造の違いを見ると理解が捗り、意味が腹落ちしますね。

そんな製造原価を低く抑えて粗利率が高いユニクロと比べても2nd Streetの粗利率は高いわけですから、2nd Streetの粗利率はやっぱり高い水準にあると思えます。

指標が他社と異なるZOZO TOWN

ZOZO TOWNを展開するスタートトゥデイもアパレル業界で脚光を浴びる企業ですから比較に入れないわけにはいきません。

しかし、今まで挙げたアパレル企業の中でスタートトゥデイが異質なのが委託販売が主軸だという点。

彼らは商品を仕入れているではなく、有名ブランドの委託販売をやっているのです。委託販売による手数料収入が彼らのビジネスモデルです。

その特徴は決算書にも表れています。

通常、粗利は売上高から仕入原価や製造原価といった売上原価を差し引いて算出しますが、彼らの場合は商品各々の売上原価は発生しません。委託販売の手数料収入がそのまま売上高となり、それはすなわち利益なわけです。手数料収入=売上高=粗利という数式になるんですね。

そういうビジネスモデルの特性上、売上高を基準に粗利を算出するのではなく、商品取扱高をベースに粗利を算出するほうが適切でしょう。

売上高を基準としてしまうと約90%と異常に高い数値になっています。先程挙げた比較表で図抜けて高い数値になっていたことに気づいた方もいると思います。

商品取扱高をベースにし計算し直すと、粗利率は33%、営業利益率は12%となります(図表「スタートトゥデイ②」)。

上記の違いを踏まえてまとめ直したのがこちらの図です。

※「スタートトゥデイ①」→売上高ベースで計算、「スタートトゥデイ②」→商品取扱高ベースで計算。

それでもユニクロやしまむらと比較しても、営業利益率は高い水準にありますね。粗利でみると、しまむらと同水準です。両者に共通するのは、自社で生産を行っていない点。

小売販売、委託販売と販売方式は異なりますが、製造メーカーが作った品物を売っている点は共通していますのでそのあたりが同水準の粗利率として表れているのかもしれません。

結局どう思うの?!

中古アパレル事業は粗利は高い。果たして儲かっているか?

さて、本題に戻ります。本題は「一体全体2nd Streetの粗利は高いのか?儲かっているのか?」です。

2nd Street事業は公開されている粗利率での比較はできるものの、販管費や営業利益といった指標での比較は公開情報からはできないという前提はありますが、リアル店舗を持つという共通点のあるユニクロ、しまむらと比べても粗利率が20%〜40%弱も高いのです。

これはメーカーとして製造原価の低減努力を行っているはずのユニクロより高いことを踏まえると、粗利率は高い水準にあると考えられることは既に述べました。

同じ中古アパレル業のブランディアと比較してみても、粗利という点ではどちらも商品の仕入原価=売上原価がのはずで中身は大きく違わないと考えられますが、ブランディアの粗利率は50%となっています。

その点からもやっぱり2nd Streetの70%は高いと思えます。

今度は実際に「儲かっているか?」という観点で考えてみます。粗利率がたとえ高くても販管費もすこぶる高いという事業構造ゆえに営業利益率は他社と同レベル、もしくは低い水準ということもあり得ます。

で、先程触れた「リアル店舗を持つ」という点が一つの参考材料になると思っていて、リアル店舗を持てば当然店舗スタッフの人件費や賃料などは相応に発生しています。今度はリアル店舗にかかる費用が計上される販管費を見ていきます。

販管費はゲオグループならではの店舗運営で低い可能性

そもそもなぜゲオグループでは他の4事業と販管費が合算されているかを考えてみると発見がありますが、2nd Streetの店舗はゲオショップだったものを店舗転換したものも結構ありますし、ゲオショップと店舗を共用していたりします。

要は店舗を共同利用することで店舗運営費を抑えられているのでは?と思ったりするわけです。

試しに、今ある2nd Streetの店舗で、完全に2nd Streetのみで古着しか扱っていない店舗と、ゲオショップが同フロアにあったり隣接している店舗があるかを北海道内の店舗を私なりに調べてみたところ、6割が2nd Street単独でやっている店舗、残り4割がゲオショップと共用、隣接している店舗でした(本当は全都道府県の店舗をみようと思いましたが、500店舗以上あって大変なので北海道だけのデータです。すみません。)

ここらへんの店舗を共用できたり、ゲオ→2nd Streetに店舗転換する手法で初期投資や運営費を低く抑えられているんじゃないかと思うわけで、ここはゲオグループの強みのように思えます。

テレビ広告も打っていますが、大スターを起用するわけでもないですし、映像の演出などを見る限り、広告宣伝費に特別お金を掛けているわけではないでしょう。

同業他社に挙げた企業のほうが確実にテレビCMに金をかけています。

そう考えると、販管費は低く抑えられているはずと思うのですが、売上高に占める販管費の比率で見ると39%とユニクロと同レベル。しまむらは25%とかなり低い。

ゲオは中古ゲームやレンタル含めた5事業全部の販管費ですから、この販管費39%が高いか安いかは判断が分かれるところだと思いますが、6割が2nd Street単独店舗にするくらいですから、単独事業で販管費を見ると、おそらくもっと低い水準に抑えられているのではないかと想像します。

粗利率も高いし、儲かっていると思う

こういったことを踏まえると、2nd Streetというゲオの中古アパレル事業は粗利率は高いが、他事業の低い粗利率に引っ張られて営業利益率としては割と普通の水準になっているが、販管費も比較的低く抑えられていると推定され、営業利益率もきっと高い。

2nd Streetはきっと儲かっているんだと思います。

シェアする

フォローする