イーロン・マスク(Elon Musk)という人がいます。
テスラ・モーターズという電気自動車メーカーのCEOです。テスラ・モーターズの前には、PayPalを創業していたり、民間宇宙船開発会社であるスペースXも創業している方です。以前、ブログでも少しだけ書きました(人工知能のくだりです)。
この御仁の本が出るらしいです。
自伝ではないようですが、本人や周囲の人へのインタビューがあって既出の本より良さそうです。割と知っているつもりですが、早く読みたくて仕方ありません(2015/09/15時点で予約受付中です)。
さて、このイーロン・マスクは注目度マックスなのですが、なかでもテスラ・モーターズは電気自動車としてかなり成長しています。テスラ・モーターズが今はまだ高級車市場をマーケットとしているため、まだまだ日本での認知度はありませんが。
大阪に住む私は残念ながら、一度もテスラの車を路上で見たことはありませんしね。唯一拝めたのは、グランフラントの展示車くらいです。
しかし、彼は絶大な人気と注目度を誇っています。シリコンバレーで最も注目されている男の一人です。
目次
イーロン・マスクがつくる電気自動車がなぜシリコンバレーで注目されるのか
なぜ電気自動車なのにシリコンバレーで注目されているかというと、テスラの車はソフトウェアを核とした電気自動車をつくっているからです。
ソフトウェアが核ってどういうことかというと、例えば、車の新機能やメンテナンスをソフトウェアアップデートで行うといったような感じです。
自動車の新機能をソフトウェアアップデートで追加するなんて発想これまでありませんでしたよね。そんなことができんのかって思いませんか?
新機能をソフトウェアアップデートで提供するってまるでスマホみたいですが、本当にそんなソフトウェアテクノロジーが結集した電気自動車を作っているんですね。
既存の自動車業界構造をひっくり返すビジネスモデル
メンテナンスもそうです。普通だったら自動車修理工場だとかに持っていきますよね。日本がそうであるように、至るところにカーディーラーがありますし、修理工場があってそこでメンテナンスしてもらうのが一般的です。
とくに、日本の地方は田んぼ以外は、土建屋さんと自動車修理工場しかないんじゃないかと思うくらい日本中どこでもありますよね。
そんな修理工場が行う維持・メンテナンス(車検)を極力排除した車を作っているんです。そういう破壊的なビジネスモデルをテスラはやっています(彼らは明確にディーラー販売に消極的な姿勢をとっています)。
自動車の構造だけでなく、産業のヒエラルキーまでも根底から覆すような自動車を作っているんです。
そういったソフトウェアを核とした車を作っているから、シリコンバレーでめちゃめちゃ注目されているんです。シリコンバレーというか世界的に既にめちゃめちゃ有名ですが。
昨今、スマートカーという言葉が一般的になったように、自動車メーカー各社がソフトウェアに注目していますが、彼はもっと前からやっていました。というか、彼がいたからこそ、自動車メーカーもソフトウェアを重要視するようになったと言っても過言ではないと思います。
彼が新たに打ち出した「ギガファクトリー」構想とは
その彼が先頭に立ち進んでいる電気自動車開発なのですが、昨年とんでもない構想を打ち出してまた注目を浴びました。
それがギガファクトリー構想です。電気自動車に使用するリチウムイオンバッテリーを50億ドルもの超巨額投資をするという発表をしました。これにはリチウムイオンバッテリーの雄、パナソニック(旧三洋電機)が出資しています。
巨額投資でリチウムイオンバッテリーの生産コストを抑えようとしているようです。リチウムイオンバッテリーを安くすることで現在の高級車市場のみならず、大衆車のランクまで電気自動車を普及させようと本気で取り組んでいるのです。
そして、ここで注目すべきはこのリチウムイオンバッテリーを実は電気自動車向けにだけ生産・供給を考えているわけではないという点です。
実はこのリチウムイオンバッテリーは産業用や家庭用蓄電池としても展開される予定なんです。
高まるエネルギー・ミックスへの関心
家庭用蓄電池というとまだまだ普及してはいませんが、日本でも東日本大震災後の計画停電騒動で一躍注目されるようになりました。
当時は(今も)、まだまだ家庭用蓄電池も手軽に買える値段ではありませんが、昨今の原発問題を起因とするエネルギー・ミックスへの取り組みは各企業が積極的に行うようになりました。
例えば、太陽光発電パネルを作っている京セラは東京センチュリーリースと組んで、あちこちに水上メガソーラーを建設しています。千葉や兵庫など最近よく見ます。
国としても、数年前からエコ住宅等の補助金も出していたり、電力改革を進めていて、従来の電力会社(東電等)一辺倒だった電力供給体制を変革していこうとしています。
この流れは日本に限った話ではありません。
自動車に限った話ではありますが、カリフォルニア州の排出ガス規制はかなり厳しく、トヨタのプリウスですら排出ガス規制に苦しんでいるくらいです(テスラを中心とする米国電気自動車メーカーのロビー活動の賜物??)。
おそらく州や企業レベルで見ると、米国のエネルギー・ミックスの取り組みは幾らでも出てくると思います。
世界的に見て、この電力を取り巻くエネルギー・ミックスの流れはますます進んでいくことでしょう。
家庭用蓄電池のニーズと変化するエネルギー消費のあり方
そんなエネルギー・ミックスの中で、より安定した安価なエネルギー供給体制を考えたときに、この家庭用蓄電池というのは重要性は増してくると思っています。
電気は貯められません。
電気の特性を考えたとき、家庭用蓄電池は家庭の非常用電源としてより注目を集めると思います。
例えば、日本においても、東日本大震災で経験した計画停電も今でこそ節電等の工夫で回避しているのであまり実感はありませんが、原発の再稼働も不透明ですし、いつまでも電力会社や発電会社がつくった電気だけに頼れるかどうかわかりません。
ほとんどの電力会社が原発停止後は、主要な発電方法を火力発電に切り替えたため、原油コストの影響を受けていて、大幅な赤字に苦しんでいます。最近は原油安になったために損益が改善したようですが、それもいつまで続くかわかりません。
この発電コストの上昇は消費者の月々の電気代にじわじわと跳ね返ってきています。
国が推し進める電力改革では、消費者は電気購入の選択肢が増えます。そうなれば、多くの人がより安いところから調達しようと、数ある選択肢を比較検討し始めると思います。中には、地球のことを考えて、クリーン・エネルギーを選ぶ人も出てくるでしょう。選択肢が増えれば電気ということについて、一般家庭でももう少し考えると思います。
「災害のリスクに対して、いつまでも送電網からくる電気に頼ってていいのか?」そんなことを考える人も出てくると思います。
こうして選択肢が与えられたとき、単純に電気をどこと契約して供給してもらうかという話に留まらず、きっと自前で電気を生み出すという選択肢も検討する人ももっと出てきます。
今ではスマートハウス、HEMSという家庭の消費電力を見られるような仕組みもあります。
電気を買う先を選べて、しかも、家庭の消費電力が見られる。それに、自前で発電すれば、補助金がもらえたり、税制優遇もあるし、売電もできるかも。
そんなエネルギー・ミックス体制を消費者が自らで考えるようになったとき、送電網からくる電気、自前の太陽光発電に加えて、もしものときの非常用電源として家庭用蓄電池という選択肢もきっと検討すると思います。
新しいエネルギー供給網を押さえるイーロン・マスク
そして、そんな家庭用蓄電池を販売する会社を彼は持っているのです。ソーラー・シティという太陽光発電会社がそれで、ここは蓄電システムを扱っています。
テスラ・モーターズという電気自動車だけを作っているわけではなくて、電気自動車に使われるリチウムイオンバッテリーを家庭用蓄電池としても普及させることを考えているのです。
ギガファクトリー構想が出た当初は、かなりの人が多大なその投資について疑問を投げかけましたが、そういったことを跳ね返すくらいの壮大なビジョンとそれを実現するビジネスモデルを持っているのです。
そんな彼がどういう人物なのか興味がつきないわけです。