【感想】明るい宇宙サバイバル映画『オデッセイ(原題:The Martian)』【ネタバレなし】

SF映画『オデッセイ(原題:The Martian)』を観て来ました。映画館は最近ハマりにハマっている”IMAX次世代レーザー@エキスポシティ”です。この映画はマット・デイモン主演、リドリー・スコット監督というスター俳優、スター監督の作品でとても楽しみにしていました。アメリカでは昨年10月公開されていて大ヒット中で、町山智浩氏のラジオでも出てきていたので、待ち遠しかったところです。結果、期待を超える面白さでした。

(関連記事書いています↓)

明るい宇宙サバイバル映画

話の筋

この映画の中でマット・デイモンが演じる主人公は植物学者マーク・ワトニー。火星探索活動中に猛烈な砂嵐に巻き込まれパイロット達は火星脱出を図りますが、砂嵐で飛んできたアンテナがマークにぶつかり死んだと思われ、火星に取り残されてしまうところから話は始まります。

運良く彼は生きていたのですが、場所は火星。水もなく備蓄の食物も残り30日分だけ。もし地球のNASAが彼の生存に気付いて助けが来るとしても地球から有人飛行船が火星に到着するのは4年後。

そんな過酷な状況下で植物学者ならではの知識・知恵を働かせ、火星で水を発生させ、肥料を作り、食物(ジャガイモ)を栽培して生き延びようとしますが、冒頭の砂嵐のような急激な自然の変化、火星の脅威が襲ってきます。

そんな環境下で一体彼は地球に還ってこられるのか?!という話です。

見所

植物学者マークが自身の知恵、地球の仲間からの教えを吸収し試行錯誤をして生きる姿は非常に躍動感があります。そして、この躍動感をうまく演出しているのが音楽。

この映画で使われているのは、70年代ディスコヒットメドレーなんですね。宇宙のシーンでドナ・サマーなんかが流れるんです。あの『ホット・スタッフ(Hot Stuff)』ですよ。コカ・コーラのCMとかで絶対聞いたことがあるやつです。

これはジェシカ・チャスティン演じるルイス船長のお気に入りの楽曲集で脱出活動の中で火星に残っていたのですね。他にはつい先日亡くなったデビット・ボウイ『スターマン(Starman)』これを独りぼっちの火星生活のBGMとして流れるわけです。

この音楽のおかげで不思議と悲壮感がないんですよね。

彼の科学技術を活かした取り組み自体とても前向きで気持ち良いものなんですが、これが70年代音楽と合わさると威力がハンパないです。火星の砂漠を目にしているはずが、マジで爽快な気分になります。

映画が面白かった理由を考える

この爽快感はどこから?

この爽快感はどこから来るのだろう?そう思ってシナリオを振り返ると気づくことがあります。それはこの主人公マークの家族の話がほとんど出てこないこと。

彼の家族の話は本当に申し訳程度に出るだけです。「自分にもし何かあったときに家族に託け(遺言)を伝えてくれ」という主旨のセリフがあるだけで、家族構成が映画だけでは全くわからないようになっています(私は原作を読んでいませんが、そっちは違うのかもしれません)。

こういった家族とのドラマというのが主人公マークには全く見えてこないようになっているんです(他のパイロット達はまだ少しあります)。マークが黙々と生きるために火星で人間が生み出した技術を実行していく姿にフォーカスされているんですね。

SFによくある終末論的ストーリーは皆無、YouTubeの温度感をも感じる

といったように「彼は地球に還って来られるのか」が話の中心であって、その過程にはSFでよくある人類の終末論的な話は全くありません。上述の通り、彼の家族等の背景になる情報すら出てきません。分かるのは、彼が植物学者であり、自分で考えた生き残る術とその過程を残されたアクションカメラ(Go Pro)に饒舌に語りかけるようなユーモラス人だということ。

この姿はまるでYouTubeの「やってみた動画」を見ているような気分にさえなりました。カメラに自らを晒す、それも結構ベラベラと語りかける人というのは結構いるもので、やっぱり人間には承認欲求があるのだなと。こんなにも楽しそうにカメラに自分を晒す人がいるものかというあの驚きです。

確実に世間ではオタクなはずの主人公マークですが、やっぱり好きなこと、植物学であればこんなにも楽しそうにカメラに向かってしゃべるんだなと(危機的な状況に置かれていることは影響しているとは思いますが)。

特に、彼が地球と交信ができるようになる前は完全に孤独状態で、その中で独り家庭菜園を作りカメラに向かって饒舌に喋るシーン(ほとんど他のキャストが出てこない)は、YouTubeのやってみた動画そのものだと感じました。

これは私だけかもしれませんが、中にはカットの間隔すらもYouTubeのスピード感を感じたところがありました。完全な孤独の作業が続くシーンで超短いカットを繋ぐところがありました。それはそんなに短くせんでもいいだろう、というスピード感でした。

こういうところに最近の時代感覚を感じました。

そして、この映画のストーリーを決定づけているというか、キャッチコピーが秀逸だと思います。日本版だと「70億人が彼の還りを待っている。」、アメリカでは「Bring him home」どちらも同じような意味ですが、これは見事だと思います。

October_2_24_92_99_18.eps

彼が還ってこれるのか、そもそも火星に行っている人間ってすげえなオイ!と人類の叡智を見事に感じさせてくれるストーリーを的確に表していると思います。地球外生命体との戦いとかそんな話ではないですから。

あまり詳しくは言えませんが、今の映画市場を意識したキャッチコピーでもあり憎い限りです。

IMAX次世代レーザーおすすめ

最近はエキスポシティのIMAXにすっかりハマってしまって、3D映画だとかの大作映画のほとんどをここで見るようになりました。エキスポシティのIMAXは全国のIMAXと比べてもかなりの大画面ですので、大阪にお住まいの方は是非一度はご覧いただいた方がいいと思います。

エキスポシティのIMAX(次世代レーザー)がどれだけすごいか、他のスクリーンと比較したエントリーも書いています↓

特に、『オデッセイ』は圧倒的なビジュアルセンスを持つ巨匠リドリー・スコットの映画です。あの『エイリアン』や『ブレード・ランナー』を生み出した監督ですから。

シェアする

フォローする