10年ぶりくらいにF1を最近見ています。きっかけとなったのは、Netflixで配信されていたこのシリーズ。
『フォーミュラ1:栄光のグランプリ』という2018年シーズンのF1の取材に基づくドキュメンタリー作品です。
ドライバーやチーム、それを率いるチーム代表など様々な立場の人間に密着し、内幕を多面的に知ることができる作品になっています。
F1の内幕というのはどういうものか、あまり馴染みのない方向けに少し紹介してみたいと思います。
目次
かつて連覇も果たしたルノー
例えば、ルノーというチームがあります。
ゴーン騒動で揺れる日産との関係でも注目されるあのフランスの自動車メーカーです。
ルノーのF1チーム(チームのことを「コンストラクター」と言います)は10〜15年前は非常に強くて優勝もしていたチームでした。
「フェルナンド・アロンソ」というスーパースターがいますが、彼が在籍した2005年、2006年はドライバー個人でもチームとしても年間優勝を果たしました。
しかし、ここ最近は中位争いに甘んじています。
彼らは自動車メーカーであり、エンジンも自社で作っていますが、そのルノーからエンジンの供給を受けているチームがあります。それがレッドブルというチーム。
ルノーの「2つの顔」〜F1チームでありエンジンメーカーでもある〜
このあたりはF1の面白いところの一つです。ルノーは自身でF1チームを持ちF1に参戦する一方、自社エンジンを他の競合チームにも供給しているのです。
ルノーにとってレッドブルはライバルであり、一方ではエンジンを買ってくれているお客様でもあるわけです。
何ともビジネスライク。
こういうことはビジネスではよくあることですよね。
例えば、GoogleとAppleはスマホOS(Android、iOS)でライバルですが、iPhoneのブラウザ(Safari)のデフォルトの検索エンジンをGoogleにしてもらえるようGoogleがAppleにお金を払っていると言われています。GoogleにとってAppleはライバルでもありお客様でもあるのです。
ビジネスのある局面で生じる複雑な利害関係が垣間見えるのがF1。
そのレッドブルも2010年〜2013年にかけてはドライバー、チームともに年間優勝していたチームでしたが、上位争いからは遠い状態にあります(このときのドライバーは今は名門フェラーリのファーストドライバーのセバスチャン・ベッテル)。
ルノーにレッドブルが抱く不信感
なかなか上位に食い込めないとなると改善点を当然考えます。そのとき浮上するのが、本当にルノーのエンジンでいいのか?という話。
ルノーはライバルなわけで、自分たちの成績も悪いという状況下でレッドブル側に「ルノーが自分たちのために本当に良いものを作ってくれているのか?」という疑念が湧いてきます。このエンジン思ったより遅くないか?自分たちの車のシャーシに合ってないんじゃ?と。
そういったライバルでもありお客様でもあるチーム同士のフラストレーションというのが何とも生々しいのです。
ファーストドライバーとセカンドドライバー、熾烈なポジション争い
一方、ドライバー個人に目を移すとこちらも葛藤とバトルが渦巻いています。
F1は各チームから2名のドライバーがレースに出場しますが、ファーストドライバーとかセカンドドライバーと呼ばれるように、”優先されるドライバー”というのがいます。
F1がチーム戦で各レースでポイントを稼ぎ、全21レースの総合ポイント数で年間優勝が決まるスポーツですから、各レースの局面では「こっちのドライバーにポイントを稼がせる」といった判断が必要な時があります。 (ポイントは1位〜10位から順に25、18、15、12、10、8、6、4、2、1とポイントが与えられます)
しかし、ドライバー個人としては成績が悪ければ首になってしまいますから、チームメイトのほうが優先されるというのは屈辱であると同時に、死活問題でもあります。
ベテランと若手の戦い〜2018年レッドブルチーム、リカルドとフェルスタッペン〜
2018年のレッドブルのドライバーはダニエル・リカルドとマックス・フェスタッペン。
年長でありF1経験も長いリカルドと期待の新鋭のフェスタッペン。
「若くて才能のあるフェスタッペンのほうにチームは期待しているのではないか?」
ベテランの域に達しつつあるリカルドは不信感を持つようになっていて、そういう状況下で来季の契約をどうするか各々がどのような選択をするのかが描かれています。
当然、プロの世界ですから報酬の面でもドライバー間には差があります。公開はされていませんが、若手のフェルスタッペンのほうが契約金額が大きいなんて噂もあったようです。
そのような「決して大っぴらにはしないが透けて見える」チームの自分に対する評価にドライバーは常に悩まされているのです。
F1を見られるネット配信サイト
F1を構成するチーム、ドライバー様々な人物各々に取材し彼らのフラストレーションに焦点を当てて、何本かのショートストーリーにまとめられたのがこのNetflixのシリーズです。
これを見ると、F1の楽しみ方が増えます。
たまたまこれを見てからF1熱が急上昇し、DAZNでF1を見るようになりました。
DAZNは1ヶ月無料で試せますが、今はF1が楽しくて有料契約に切り替えました。DAZNにはマルチビューイングがあります。
このマルチビューイングが良くて、選手のラップタイムなどが常時表示されていて刻一刻と変わるF1レースの状況をリアルタイムに楽しめます。
あと、生配信はもちろん見逃し配信もあります。
思えば僕が10〜15年前に深夜にフジテレビで放映されていたF1を見ていたときには、チーム事情だとか含めて多面的に見ることはなく、ドライバー個人の戦いにばかり注目していました。
当時のスターといえば、冒頭に書いたフェルナンド・アロンソとルイス・ハミルトンでした。最近見てもハミルトンは依然、トップを走る大スターですね。
当時は新鋭だったベッテルもレッドブルの黄金時代を経て今やフェラーリのファーストドライバー、いぶし銀のライコネンも未だ現役なのも驚き。
チームは10〜15年前はルノーやマクラーレンが強かったですが、現在はメルセデス1強にフェラーリが挑む格好と随分様変わりしています。
レギュレーション変更等もあり常に新しい技術開発のプレッシャーに晒されるF1の世界。たった20しかないF1のシートを奪い合うドライバー同士の熾烈な競争、チーム存続のための資金調達に悩む経営者。
築き上げた名誉も地位も束の間、必ず栄枯盛衰が繰り返されるというまさに社会の縮図。
今年もあっという間にモナコGPも終了しました。
メルセデスがリードしていますが、これにフェラーリがどこまで食い下がることができるか、レッドブルも上位争いに復帰できるのか、見どころはたくさんです。